セックス依存症のイケメン①

広告会社勤務、31歳、名前は仁(仮)。

一流と呼ばれる大学を出ていて、全盛期のKAT-TUN赤西仁を思わせる美しい顔をしていた。

 

<美術館と猫が好き>

 

プロフィールにそう書かれた、サブカル臭漂う彼と私は、ずいぶん前に会う約束をしていた。

 

しかし当日の早朝。

訳のわからない理由でドタキャンされた。

 

その時の記録がこれである。

 

 

この日の夜、仁は「いい湯でした♨️」という報告をしてきたが、私たちが会う約束はリスケされることなく、気づいたら彼はTinderから消えていた。

 

そして10ヶ月近くが経ったある日のこと。

 

彼は再びTinderに現れ、定型文を送ってきた。

 

<こんばんは!このアプリどのくらいやってます?>

 

あの美しい顔と、自由奔放すぎるドタキャン。

忘れるはずがなかった。

 

私はこう返信した。

 

<お前が温泉に行くとドタキャンしたあの頃からだよ>

※本当はもっと前です

 

<あ!その節はすみませんでした。おかげさまでいい湯でした♨️

 

それから私たちはしばらくやり取りを続けた。

同じ質問を返そうとTinder歴を尋ねると、彼は答えた。

 

<やめたり再開したりだけど、10年くらいかな>

 

10年。

 

これはもう、病的なヤリモク確定である。

彼は続けた。

 

<海苔子さん、遊ぼー>

 

<知らない人とできないタイプだから、期待に添えないや>

 

<いや、そういうんじゃなくて。会って話す的なこと>

 

<Tinder10年やってる人が、そういうんじゃない、なんてことはあり得ない>

 

<そうなんだけどさ。海苔子さんは、そういうんじゃない>

 

簡単に女性を部屋に連れ込める彼のようなモテるタイプは、ガードの固い女をゲーム感覚で落としに掛かろうとすることがある。(以下参照)

noriko-uwotani.hatenablog.com

その手には乗らんぞと思い、私は彼のメッセージを無視した。

ところが、2週間ほど経ったある日の夜。

 

仁から再びメッセージが届いた。

 

<通話しない?>

 

私はその日、予定されていた飲み会が急遽なくなり、気持ちが外に向いたまま家で時間を持て余していた。

 

<何かあったの?>

 

<俺セックス依存症で、アプリやめたいのに開いてしまってしんどい>

 

風向きが変わった。

 

<少しだけ話そうか>

 

仁から送られてきたLINEのIDを検索し、通話ボタンを押す。

すぐに出た仁は、やわらかい口調で言った。

 

「こんばんは初めまして。なんかこういうの、緊張するなぁ」

 

私は自己紹介もほどほどに、彼の悩みを聞き出した。

 

「大好きな彼女がいて、結婚したいしお金貯めなきゃいけないし、いつも申し訳ない気持ちでいっぱいになるのに、やめられないんです」

 

彼女とは8年付き合っているが、身体の関係はもう何年もないという。

 

「彼女とはできないんですよ。母や姉とする、みたいな感じになっちゃう。でも本当に大好きで、結婚しようってずっと言ってる」

 

「彼女とできないから他で満たしてるってこと?」

 

「それが、そうでもなくて。一時期、職場の都合で彼女と同棲してたんですけど、その頃は一切他の子とする気持ちにならなかった。しなくても満たされてた」

 

闇が深そうだな、と思った。

 

「いま他の女の子としたいっていう気持ちの背景にあるものは何だと思う。性欲?承認欲求?」

 

「性欲だと思う。昔から強いし」

 

「だとしたら、不特定多数とする必要はないよね」

 

「あー…確かに。でも特定の人をつくる気にはなれないし、同じ人とは2回以上会わないって決めてて。え、承認欲求なのかな?これ」

 

仁はTinderの他にもマッチングアプリを複数利用していて、月に10人以上のペースで女性を家に連れ込んでいるという。

 

イケメンすげぇ。

てか世の女子たちよ、大丈夫か。

 

「ちなみに彼女は知ってるの?」

 

「何も言われたことないけど、気づかれてるような気はする。仕事が大好きで、すごくドライな子なんですよね。会うのも月に2回ごはん行くくらい」

 

おそらく彼女は気づいているだろう。

何も言わないのは諦観か、私が理解できない種類の愛情か。

 

「いつからそういうことするようになったの?」

 

容姿に恵まれ、有名な大学を出て上場企業に勤め、愛する彼女をもつ男が、精神的に満たされない理由は何なのか。

私はそれを、解明したくなった。

 

「俺、性に目覚めた時から『ビジネスホテルのマッサージ師とやりたい』ってずっと思ってたんです。地元がXXなんですけど、高3で大学受験のために上京するじゃないですか?その時、それが叶って」

 

予想を斜めに上回るエピソードが飛び出した。

 

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