前編はこちら↓
<今日はありがとうございました!今度は飲みに行きましょう。新宿で行きたいお店とかあります??>
これは…脈ありなのか?
おお神よ。
これまでティンダー続けてきてよかったです。
あざっす!!!!!
私は久々のビッグウェーブに震えながら、ひとつお店を提案した。
<ここ行ったことないです。気になります!行きましょう!>
<来週の日曜はどう?>
<あー、、すみません!日曜は予定があって…>
~終~
マッチングアプリユーザーなら共感していただけるだろう。
ここですぐに代案が送られてこない絶望を。
彼の手元で山積みになった”日程調整中案件(優先度高)”が透けて見えて、私のテンションはダダ下がりした。
翌日もLINEはなく、私は彼のTinderのプロフィール文を改めて見た。
すると、ほんの僅かに、私が編集者ゆえに気づくレベルの編集がテキストに加えられていた。
どうやらTinderはぶん回してるようですね。
もういいぜ。
また連絡きたらラッキー、くらいに思っておこう。
私は自分の中に予防線を張りまくり、待った。
LINEが届いたのは、翌々日のことだった。
<再来週の土日のどっちか、おいしいケーキ買って行くんで、海苔子さんの家で食べるのはどうですか??>
下には、食べログ3.9点のケーキ屋のリンクが貼られていた。
は?
はあぁぁぁぁぁぁ?
ナメられたもんだな。
ふざけんな。
<今度はうちでセクースしようと、いつ言った?>※原文ママ
<でもここのケーキ、けっこう並ばないと買えないんですよ?>
まずセクースにツッコめや、ボケ。
ツッコミがなかったことで二重に落胆したマッチングアプリ芸人の私は、彼のLINEを無視した。
そして静かに目を瞑り、「ヤリモクは喫茶店に来ない」というセオリーが崩れる音を聞いた。
いや、もしかしたら。
彼は最初、ヤリモクではなかったのかもしれない。
会った結果「本命にするほどではない」と判断し、ヤリモクにシフトした可能性は大いにある。
でも、だとしたら。
「ヤリモク多くないですか?」という会話を、彼はどういう感情でしていたのだろうか。
あの時、彼は私にこうも尋ねたのだ。
「この人はヤリモクって、何でわかるんですか?」
私は丁寧に教えてあげた。
「必ずお酒のあるところで会おうとするし、選ぶ店が薄暗い。隙あらば触ろうとしてくる。過剰に褒める。会話がペラい。ただ、たいてい見た目はかっこいい」
それを聞いたユウは、感心していた。
「海苔子さんはそういう人じゃ駄目なんですね」
「まず人間として興味を惹かれないと、性的な興味も惹かれないみたいで」
「なるほど」
~回想終~
あの瞬間、私が簡単に寝るタイプではないことをプラスに評価してもらえたのだと、おめでたい解釈をしていた自分が笑える。
私はTinderを開いてユウをブロックし、その勢いで『海苔子、Tinderやめるってよ』を書き上げそうになった。
それでも言うことを聞かない右手は、今日もスワイプを続けている。