10年来の友人と結婚する世界線の話⑪

一切の希望を無視して私を大阪へ送り込んだ人事部は、それ以降、なぜか優しかった。

私は希望を出す限り大阪にいられたので、なんやかんや自分の意志で6年もいた。

 

まさかの沖縄へ転勤になった彼氏とは呆気なく終わったが、やりたかった仕事が全部できて、愛してやまない芸人をたくさん取材できた大阪ライフは、心から幸せだと思える期間だった。

 

もう大阪でできることはやりきったなとようやく感じた6年目の終わり、私は新幹線の片道切符を買い、東京本社に戻った。

 

ちょうどその頃、新型コロナウイルスが流行っていた。

 

忘れもしない、3月の終わり。

東京に向かう新幹線の車両には私ひとりしか乗っておらず、新居の鍵を取りに久々に降り立った渋谷はゴーストタウンだった。

 

せっかく東京に戻ったのに誰にも会えず、部署を異動したこともあって仕事も暇だった。

 

転職をしようかな。

 

そんな考えが頭を過り、私はコロナ禍に人生で初めての転職をして、次の会社の近くに引っ越した。

 

それから半年が経ち、新しい職場に慣れ始めた頃、ふとタクヤのことを思い出した。

 

そういえば、あいつの家は、たしかこの辺ではなかったか…?

 

大阪で飲んだ時、彼が「今XXに住んでる」と言っていたその街に、私は偶然いた。

 

久しぶりにFacebookを開きタクヤの名前を打ち込み、変わらないプロフィール写真をタップした。

タイムラインを見て、おや?と思った。

 

「入籍しました」の投稿が、消えている。

 

忘れもしない嫁の名前も、旧姓を含め検索してみたが、ページさえ出てこなかった。

 

もしや…離婚した??

 

あの衝撃から時間が経ち、一人のサイコパス・フレンドと化したタクヤを内心面白がっていた私は、久しぶりに彼に連絡してみることにした。

 

<久しぶり。実は東京戻ってきて、転職して今XXで働いてるんだけど、タクヤってまだXXに住んでる?>

 

<マジ?会社どのへん?>

 

Google Mapにピンを刺して送ると、すぐに返信が来た。

 

<目の前の◯◯(マンション名)に住んでる笑>

 

会議室の窓からいつも見ていたマンションに、彼はいた。

 

こんなこと、ある?

 

もうタクヤに対して恋愛感情など1ミリもなかったが、やはり縁のある人だなと思わずにはいられなかった。

 

<びっくり笑 ご時世的に難しいかもだけど、またタイミング合えばごはんでも行こ>

 

<俺、フライトの度にPCR受けてるから、むしろ堂々と飲めるよ笑>

 

マジか。

え、どうしよう。

 

そうして私たちは、数年ぶりに再会を果たすことになった。

 

続く。