「美人なら、バチェラーしよ」
数年前、Facebookに流れてきた広告を見て、時代錯誤なコピーに唖然とした。
「バチェラーデート」とは、”ハイスペ男子と美女が集まる審査制AIマッチングアプリ” らしい。
入会できるのは美女だけと謳われているものの、アプリ自体は完全なブラインド。
つまり、審査用の写真提出は必要だが、それらが公開されることはない。
アプリのUIはクソだが、仕組みはなかなか面白い。
自分の空いてる日時さえ入れればAIが勝手にマッチングしてくれて、前日の朝に相手情報と待ち合わせのカフェの場所が送られてくるのだ。
そしてデートが終わると、相手の容姿や振る舞い、マナーなどを採点して「レポート」を提出しなければならない。レポート提出を繰り返すことでAIが好みを学習し、よりタイプに近い人とマッチングできるようになる…という。
恐ろしいのが、相手の提出したレポートが自分にも届くことだ。
自分の顔面の採点結果を知らされるなんて無理😇
と思った私は全く興味をもっていなかったのだが、「最近は新規会員獲得のためか審査がかなりゆるくなっていて、普通の子も多い」という情報をツイッターで得て、2人だけ会ってみることにした。
①東大卒、霞ヶ関の官僚、31歳、身長172㎝。
普通にエリートがきた。
ただし顔はフットボールアワー岩尾を綺麗にした感じで、服装はイケてない大学生そのもの。
マスクをつけた第一印象で「んー、厳しい…」と思っていたが、私は一生会わないと分かっていてもその場だけは楽しみたいタイプなので、会話は頑張って盛り上げた。
LINEを交換し、その日だけ軽くやり取りをして終了。
一人目と違い、見た目はモテそうな感じ。シンプルだけどお金のかかってそうな服装で、振る舞いもスマート。
しかしこの方、会話の引き出しがなさすぎた。
グルメ、旅行、音楽、映画、本などに何一つ関心がなく、唯一の趣味はゴルフだけ。(ゴルフも語れるほどはやってない)
ならばせめて全力で仕事に打ち込んでいてほしいものだが、それもまた語れるほどの情熱はなく、危うく「何が楽しくて生きてるんですか?」と質問しそうになった。
LINEも交換せずに終了。
二人とデートをするごとに自分のレポートが更新されるため、先日、恐る恐る最初のレポートを開いてみた。
私は「改善ポイント」の最初の一文を見た瞬間、バチェラーを止めようと決意した。
「髪型があなたの印象とマッチしていないようです」
うっせぇうっせぇうっせぇわ!!!
好きでもないのにフルボリュームで脳内再生されるのだからAdoはすごい。
美容師が「ショートボブにするために生まれてきたような頭の形」と絶賛する私のボブが、似合ってないわけがない。
しかし私の見た目や性格は、古い言葉でいえば青文字系で、サブカル男にしかウケない。
バチェラーを使うような選民意識バリバリの男性は、女子アナみたいな清楚系を好みがちなので、そもそも市場が違うのだろうと感じた。
お呼びでないですか。失敬、失敬。
そうして私は、わずかn=2で結論を出して、バチェラーを退場したのでした。
だって、こんなことで傷つくなんて馬鹿げてる。
それにしても二人目の彼。
ああいう中身のない男と付き合う女性はどんな人で、どんな会話をするのだろう。
同じくらい中身のない女性なんだろうか。
「上品さが少し欠けるようです」
おっと、こんなこと考えてるからそう書かれてしまうのだな。
失敬、失敬。
利点を挙げるとしたら、おそらく大半の人が悪い評価をつけられることを恐れて、その日だけは良く振る舞うこと、そして奢ってくれることだろうか。
私は、Tinderの世界に帰ります。