【番外編】街コンでAV男優と知り合った話
「原宿を歩いていたら『街コン興味ありませんか?』って声かけられたんだけど、一緒に行かない?」
友人から送られてきたリンクをタップすると、「完全招待制」と銘打った街コンのサイトが開いた。
いや、「招待」の定義よ。
キャッチは招待に含まれるのかよ。
一抹の胡散臭さを覚えながらも、予定が空いていた私は友人と参加することに決めた。
会場は都内某所のイベントホールのような場所。
二千円と引き換えに「プロフィールカード」を受け取り中に入ると、既に50~60人の男女が集まっていて、いくつかのテーブルに分かれて缶酎ハイ片手に談笑していた。
「まずはあちらのテーブルで、カードのご記入をお願いします」
スタッフに促されてテーブルに着き、あらためてカードを見る。
名前、出身地、職業、身長、好きなタイプ、理想のデート、好きな映画、食べ物。
あぁ寒気がする、こういうの。
このカードを見せ合いながら、これから2時間も薄っぺらい会話を続けなきゃいけないのか。
「配られたカードで勝負するしかないのさ、それがどういう意味であれ」
悪い顔をしたスヌーピーが、頭の中で囁く。
カードを書き終えて適当なテーブルに着くと、さっそく横にいた男に話しかけられた。
ピンク色のセリーヌのスエットにホワイトデニムを合わせた業界人風の格好。
顔や体型は「もしもラランドのニシダが20キロの減量に成功したら」を具現化した感じだ。
「初めまして~」
挨拶をしながらテーブルに置かれたニシダのプロフィールを見ると、職業欄に目が釘付けになった。
<AV男優>
!?!?!?!?!?!?
「え、AV男優なんですか?」
「はい。元は看護師だったんですけどね」
「何で?どうやって転職したんですか?」
ニシダは人当たりがよく、私が何を聞いても快く答えてくれた。
「AVで、女性が本当に気持ちいいと思えない間違ったセックスが広まっていくのが嫌で。それを変えたいと思ったのがきっかけですね」
「なるほど。でもそれなら演者より企画をやるべきじゃ?」
「その考えもあります。でも、演者を経験してない人にいい企画は作れないから」
それからニシダは、AV男優として稼げるようになった現在までの経歴を、事細かに教えてくれた。
「最初はオーディションなの?」
「そう。受験者みんな並ばされて、『はい、30分で可能な限り射精してください』っていう。植物の写真とか渡されてね」
「植物…?」
「そんなんでヌケるわけないから、要は想像だけでどこまでできるかを見られるんです」
オーディションに合格すると、AVに出演できるようになる。
最初のギャラは100円。
そこで気に入られれば再び声がかかり、ギャラも上がっていくという。
「僕の今のギャラは1本2万円で、それを月40本。今日も1本、撮影終えてから来たんですよ」
「へぇ、すごい」
「まあ今は稼げてるけど、ずっとできる仕事じゃないから。いずれは看護師に戻るんじゃないかな」
「女優さんのこと好きになったりしないんですか?」
「そういうの禁止されてるんです。女優さんは商品だから。撮影が終わるや否や『お疲れ様でした~』って感じで、すごくドライですよ」
ふと、もう一度ニシダのプロフィールカードに目をやった。
好きな映画 <塔の上のラプンツェル>
理想のデート <ディズニー>
お、おぉ…
意外や意外。
「ラプンツェルの何が好き?」
私が聞くと、ニシダは真っ直ぐな目で答えた。
「強い女性を描いているところですね」
なんだろうこの人は。
女性の演技を日常的に見ているからこそ、演技で誤魔化せない強い芯のようなものを求めるのだろうか。
その時、街コンのスタッフがやってきて、テーブルの移動を促した。
もう少し話したかったが、私は生憎、AV男優とは付き合えそうもない。
二度と会うことはないだろうと思いながら、形式的にLINEを交換した。
その後、スタッフに促されるまま定期的に移動しながら、およそ10人と会話をした。
医者やSEやYouTuberのようなよくわからない人まで色々いたが、会話は寒気がするほど薄っぺらいものだった。
あと、ご時世的に仕方ないのだが、マスクのせいで顔と年齢がわからない。
やっぱり私は、初対面で深海に潜るような会話ができる、今のTinderの使い方が自分に合っているのだと思った。
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今日で、ブログを開設して1年が経ったらしい。
当時書きたかったことを書いたらやめるつもりでいたのに、いつからか書くことがストレス発散になってしまい、毒にも薬にもならない文章をこんなにも綴ってしまった。
いつも読んでくださっている方、心からありがとう。
私が幸せになったら終わるこのブログは、残念ながらまだ続きそうです。