Tinderをスワイプしていたら、某有名芸人と浜辺でBBQをしている男性の写真が目に飛び込んできた。
職業=構成作家、出身=大阪の文字。
年は39歳。
お笑いが好きな私はすかさずLIKEを返し、メッセージで尋ねると、写真に映る某芸人の座付き作家をしているという。
私はその芸人のファンではないし苦手意識さえあったが、作家という職業に猛烈に興味を惹かれた。
年齢も30代前半までと設定していたけれど(※相手がLIKEをしてきた場合、設定外の人も表示されることがある)、これはあまりにも気になる…!
喫茶店を指定し、
<緑のカーディガン着てます>
と自分の目印になる情報を送った。
少し遅れてやってきた彼は開口一番
「緑ちゃうやん」
と強めにツッコんできて、久々に関西人の本気ツッコミを浴びた私はたじろいだ。
(緑と青の間のような色だったので、このツッコミは間違いではない)
彼はネルシャツに大きな黒いリュック、カラフルなキャップをかぶり、さながら若手芸人の風貌のせいか39歳には見えなかった。
とはいえ、9歳年上。
さすがの私も敬語で話していたところ、
「あんま年離れてへんし、タメ口でええよ」
と言われた。
9歳差を「あんま年離れてへんし」と言われたことに若干イラッとする。
一緒にすんじゃねぇ。
コーヒーを飲みながら、仕事の話をいろいろ聞き出した。
フリーランスで、芸人の座付き作家に加えてバラエティ番組の作家もしているという。
関西弁によって面白い雰囲気を醸し出しているが、私は小1時間ほど話して薄々感じ始める。
「ひょっとしてこの人、面白くない…?」
同時に、
「そもそもお笑いが好きという女に、芸人と知り合いであることをダシに近寄ってくるってどうなのよ?」
と、まんまとその餌に釣られたにも関わらず、
私は目の前の相手に嫌悪感を覚え始めていた。
喫茶店を出ると、彼はやけにカラフルな名刺を差し出してこう言った。
「Wikipediaのページあるから見てな」
帰りの電車の中で、名刺に書かれた名前をスマホに打ち込むと、Wikipediaのページがすぐにヒットした。
「〜や〜など、多岐に渡り活躍中」といった賞賛のニュアンスを含む紹介文がこれでもかと並んでいる。
リンクが貼られていたツイッターに飛んで見たが、フォロワーは数百人しかいない。
決して有名な人ではないはずだ。
私は一瞬で察した。
「これ、絶対自分で書いてる!!!」
自分のWikipediaを自分で更新する人、ダセえ…
スマホをそっと閉じ、彼からきていたLINEを見なかったことにした。
後に、彼が作家をしていた芸人は不祥事を起こし、活動休止に追い込まれた。
件のバラエティ番組も、いつの間にか終了していた。
今頃どうしているのだろう。
これを書きながら、気になって久々に彼のTwitterを探したが、アカウントごと消えてしまっていた。