メンヘラ京大ニキ③

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恐る恐るURLをタップすると、長文が目に飛び込んできた。

 

私と出会うまでに感じていた印象と、会った時のギャップ。

茶店で話したこと、食べたもの。

その後にチャットで話したこと。

急に消えてしまって絶望したこと。

必死で探したこと。

あなたのことが忘れられません云々。

 

それは3千字くらいの、限りなくラブレターに近いエッセイだった。

 

怖い。

 

真っ先に感じたのは恐怖だった。

 

100歩譲って例えばこれが、喫茶店でお互い好感触を得てLINEを交換し、その後も連絡をとり続けていた矢先の出来事なら、キモいとは思うがギリ理解できる。

 

でも、違う。

 

あの日のレオは、こんな長文を書くほど私に好感をもってなかったはずだ。

 

おそらくこのロマンチスト·メンヘラニキは、私が紹介した本の作者への敬意を私へのそれと履き違え、同時に「急に連絡が取れなくなった」という悲劇の物語を愉しんでいるだけではなかろうか…?

 

何なんだ、こいつ???

 

私は完全に引いていたが、もう次に会う店も日付も決まっている。

 

<読んだよ。ちょっとびっくりした。とりあえずXX(居酒屋)行こうか。何時にする?>

 

そう返信し、さすがに教えとくよと言ってLINEのIDを添付した。

 

そして翌週、私が行きたかった居酒屋で再会を果たした。

 

「もう会えないと思って書いた文章だったので、いざ会えるとなると恥ずかしいです」

 

レオは開口一番そう言った。

本人を前にすると、それまで感じていた恐怖が薄れた。

 

彼のLINEの名前がTinderの登録名と同じ「レオ(仮)」だったので、私は真っ先にそれについてふれた。

 

「レオって本名なんだね。かっこいい名前だね」

 

「あ、いや、偽名です。本名は◯◯っていいます」

 

「LINEが偽名なの?どういうこと?」

 

「えっと…実は女性用風俗で働いていたことがあって、その時の源氏名です」

 

「!?!?!?」

 

「前に付き合ってた人を喜ばせたくて、スキルアップのために始めて。すぐ辞めちゃったので、もう昔のことなんですけど」

 

えっと…何からツッコめばいい?

 

私は頭をフル回転させた。

 

「それはさ、彼女に『副業で風俗やろうと思うんだけど』って相談してから始めたの?で、やれば?って言われたの?」

 

「はい。前にも言ったと思うんですけど、その人とはハプニングバーで知り合ったんですよ」

 

「バーで知り合った」って、そっちのバーかよ!!!!!

 

すっかり混乱し始めていたが、これがまだ序の口であることを、その時の私は知る由もなかった。

 

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