私がこのブログに書くのは、基本的にはもう会わない、会えないであろう人だけだ。
だけど、書いた後で予想外に再会する人がたまにいる。
その時はいつも「すまんネタにしてもうた」と、前科者のような気持ちで接している。
そんな一人、初めて会った当時はベトナムに駐在していた象使い(以下参照)と、私は1年越しに再会を果たした。
彼はその後ベトナムに戻ってから、たまに泥酔してどうでもいい内容のLINEを寄越してきていたが、2023年春、シラフの彼からこんなLINEが届いた。
<本帰国する!>
私は自分のブログを読み返した。
願わくは、泥酔した象使いから連絡が来る前に、私は身を固めていたい。
叶ってなくて草。
と自嘲しながら、私は象使いと飲みに行く約束をした。
彼の引っ越しや仕事がもろもろ落ち着いた、ある金曜日の夜。
私は1年ぶりに、丸の内で象使いに会った。
その日、在宅勤務だったという彼は、服装こそカジュアルだったが、夏休みを謳歌していたあの頃と違いどことなく大人な雰囲気があった。
あ、かっこいい。
一目見た瞬間にそう思った。
「おかえり」
自分の口から、自然と出てきた再会の第一声。
エモい。
1年ぶりの再会で「おかえり」はエモい…!
テンションの上がった私とは対照的に、象使いはやや緊張していて、仕事の話題中心の表面的な会話が続いた。
「泥酔して電話かけてきたあの人と、同一人物とは思えないんだけど笑」
私が率直な感想を述べると、彼は言った。
「あの頃は駐在が寂しかったから、調子に乗って飲みすぎただけで。普段は絶対あんなことないし、帰国してからも全然飲んでないよ」
「酒癖、女癖、ギャンブル癖の3つだけは死ぬまで治らないらしいよ」
「いやいや、本当にベトナムにいた時だけだって!職種変わったし、もうずっと東京にいるから大丈夫」
彼は付け足した。
「だから、そろそろ結婚したいんだよね」
1年ぶりに会った象使いは、婚活ガチ勢になっていた。
つまり彼はいま、私を嫁候補として査定している可能性がある。
マジか。
私も冷静に彼を見た。
見た目はかなり好き。
スペックも申し分ない。
仕事熱心で真面目。
酒癖は終わっているが、彼の言葉を信じるなら治っている可能性も僅かながらある。
…総合的に、かなり良いのでは?
表面的な会話を続けながらバルで2時間ほど飲み、夜道を散歩してから2軒目に入った。
そこで、過去の恋愛の話を掘ってみることにした。
「ベトナムにいる間は彼女いたの?」
「いなかった」
「うそ、一人も?」
「Tinderで日本人の女の子と飲みに行くことはあったけど、単身でベトナムくるような子って、大学も出てなくて気だけ強いみたいなのばっかりでさ、」
1軒目からその手の発言が度々出てきて気になっていたのだが、彼は自他ともに認める学歴厨だった。
私を覚えてくれていた最大の理由も、おそらくは学歴なのだろう。
それは別に嫌なことではない。
けれど。
他人を見下す発言は、いかがなものか???
私は「あー、学歴厨だもんね」と茶化しながら、そこそこ楽しい時間を過ごし終電前に解散した。
象使いは1軒目も2軒目も奢ってくれて、解散後のLINEも丁寧だった。
もし私が婚活ガチ勢なら、大フィーバー案件だったに違いない。
だけど私は彼を前に、象使い以上にも以下にもなれなかった。
話したいこと、聞きたいことが泉のように溢れ出てくる、あの感じがなかった。
次また会ったとして、もう話したいことがない。
だけどもし来年もひとりなら、その時は普通に飲みに行くだろうと思う。
同じ象使いとして。
叶ってて草。