上京したての金融マン(後編)

前編はこちら↓

noriko-uwotani.hatenablog.com

吉岡とのLINEはその後もずっと続き、さらに2回飲みに行った。

 

毎回楽しい時間を過ごし、相変わらず吉岡は私にお金を出させようとしなかったが、どうにも会話に色気がない。

恋愛の話を振ると答えはするが、私に聞き返してこないのである。

 

4回目に会った夜、いよいよ私はぶっ込んだ。

 

「吉岡君は彼女ほしいとか思わないの?」

 

「うーん…。仕事の状況的に、いてもコミットできないので」

 

ん、ライザップ?

 

彼女にコミットできる状況じゃないと、お前は付き合わないわけ?

というか、私とこの頻度で会って連絡を取り合っている状態は、付き合ってるのと大差ないと思うが?

まさかの飲み仲間ガチ勢?

じゃあ何で奢ってくれるの?

 

聞きたいことは山ほどあったが、あまりツッコまない方が良い気がしたので「そっか」と会話を終わらせた。

 

転職したての彼は、いまは仕事にコミットしたいのだろう。

「彼女に何かしてあげなきゃ」というプレッシャーを避けたいのだろう。

 

でも、すぐに付き合ってすぐに終わるよりは、友達期間を作ってちゃんと仲良くなるパターンの方が良いかも知れない。

 

私は吉岡との関係構築に時間をかけようと決めた。

 

ちょうど吉岡の誕生日が近かったので、「今度こそ私の奢りで」と伝えて次回の候補の店を2つ送ると、彼はそのうち1つを選んだ。

 

当日、吉岡はとても喜んでくれて、帰ると丁寧なお礼のLINEをくれた。

 

<今日は本当にありがとうございました!最高の31歳の始まりです。>

<次は僕がご馳走しますね。せっかくなので、候補に挙げてくれたもう1つの方の店に行きましょう。楽しみにしてます!>

 

よかった、よかった。

こうして私たちの関係はゆっくりと深まり、いつか彼が「コミットできる」と思った

瞬間、もしかすると発展するのかも知れない。

 

私はそんな淡い期待を抱き、返信を質問で締めることで会話を続ける意思表示をした。

 

だが、しかし。

 

その返信は、初めて既読スルーされた。

1ヶ月ほど経ってもう一度連絡をしてみたが、今度は既読にさえならなかった。

 

私が何をしたというのだろう。

 

気づかぬうちに何かやらかしてしまった?

いや、元から誕生日が終わったら切ろうと考えていたのか?

もう会わないつもりだったなら、「次は◯◯行きましょう」という最後のLINEは何だったの?

あの次の日に、運命的な出会いでもあったの?

 

私はこの未読スルーに、自分でも驚くほどのダメージを喰らった。

永遠に解けない謎を心の片隅に置いて生きるくらいなら、はっきりと傷つく方がマシだ。

 

「美の基準なんて時代によって変わるすごく曖昧なものじゃないですか?だからあまり外見に囚われたくないんですよね」

 

初めて会った日の吉岡の言葉を、ふと思い出す。

 

心の目で私を見た結果がこの行動なら。

 

マジで見る目ないな、お前。