マッチグアプリで出会った男に前科があった話⑧
通知を見た瞬間、心臓がドクンと鳴った。
またも既読をつけないように、そっと中身を開いた。
<今日、息子の部屋を掃除していたら、女性向けのプレゼントが出てきて、海苔子さんの名前が入ったカードが付いてました。どうするべきか迷いましたが、ご連絡させていただきました。>
え。
どうしよう。
どうしたらいいんだ、これは。
受け取る方法がないし、中身が何かは分からないが、仮に受け取ったところで使えない。
そしてこのメッセージを無視することもできない。
何て返せばいいんだ?
母親を傷つけないように。
将来、本人がこのLINEを目にする可能性もゼロではないから、彼自身も傷つけないように。
かといって、変な期待ももたせないように。
何を送ればいいんだ?
私は悩みに悩んだ。
返せないままアユミと昼食を摂っている時に話すと、こう言われた。
「やっぱりそれ、本人が打ってると思うよ」
なぜか彼女は頑なにその説を信じていた。
「でももう1ヶ月以上経ってるんだよ?この間隔を空ける意味が分からなくない?」
「それは確かにそうなんだけど、怪しいって」
そうなのか。
アユミはそう思うんだ…
彼女を心底信頼しているがゆえに、私はショックを受けていた。
その日の夜。
私は意を決して、LINEでリョウの名前をタップし、通話ボタンを押した。
女性が出れば、本人が打っている説を否定できる。
それを確認できれば十分だった。
パニックを起こすかもしれないと思い、話す内容も事前に決めて紙に書き出していた。
これで母親と話ができたら、終わりにできる。
そう思った。
コール音が鳴る。
1、2、3…8まで数えたところで、諦めて切った。
平日の20時くらいのことだった。
<少しお母様とお話しさせていただくことは可能でしょうか?>
テキストでそう送ると、翌朝、返信があった。
<昨日お電話いただいたようで、出られなくてすみません。いま少し体調を崩しており、喉の調子が悪いため、回復したらこちらからご連絡します。>
事の顛末をアユミに話すと、あっさりこう言われた。
「役者を用意してるんじゃない?」
私は思ったことをそのまま言った。
「もしそうなのだとしたら、そうまでしてでも誤魔化したいことがあるのだとしたら、私はもう、その嘘を信じてあげようと思う」
言い終わった直後、自分で思った。
取り憑かれている。
どうかしているな。
早く終わりにしたいー
そう思いながら過ごした3日後の夜、スマホが震えた。
電話だ。
液晶に表示されたリョウの名前を見た瞬間、心臓が跳ね上がった。
続く。