【番外編】小太り心療内科医とコンパした話

以前、AV男優と知り合った街コンにて↓

連絡先を交換した人の中で、ブロックしなかった人が二人だけいた。

理由はとても単純で、大学の先輩後輩の関係性で参加していたその二人が、揃って医者だったからだ。

 

ゲンキンな奴!と言われても全く否定できないのだが、あの短い時間で「もう一度会いたいかどうか」を判断する材料として、職業は強力だった。

 

<本の話とか、もっとたくさんしたかったので是非また飲みましょう!>

 

街コンの翌日、先輩の方の医者からLINEが届き、

 

<Aちゃん(私が一緒に参加していた友人)と4人でぜひ!>

 

と返し、年明けにコンパが成立したのである。

 

指定されたのは恵比寿にある小洒落た個室居酒屋。

再会といえど前回はマスク越しに10分しか喋ってないので、ほとんど初めまして状態に近かった。

 

先輩の方は、ロングコートダディ兎を彷彿とさせる小太りの心療内科医(以下、兎)37歳。

後輩の方は、身長がほとんど私と変わらない小柄な心療内科医(以下、メガネ)36歳。

 

当直明けでほとんど寝てないという兎はやたらテンションが高く、メニューを開きながらこう言った。

 

「新年だしさー、北京ダックとかないかな?」

 

あるわけないだろ。

 

無難に注文して乾杯を済ませると、あらためて自己紹介をした。

兎は多趣味で、作曲やDJを趣味としており、インディーズでCDを出したこともあるという。

 

私「その曲ってどこかで聴けます?」

 

兎「いやいや、恥ずかしいって」

 

メガネ「アマゾンで買えますよね?兎ー’s(仮名)で検索したら出てきますよ」

 

兎「ちょっとちょっとー!」

 

いかにもコンパなノリに懐かしささえ覚えつつ、飲み会が1時間ほど続いた頃。

だんだん酔いが回ってきた兎が、音楽論を展開し始めた。

 

兎「後輩に俺の曲聞かせたらさ、『曲はいいけど歌詞がダメっすねー』って言われて」

 

私「聞かせてくださいよ。一番自信あるやつ」

 

兎「じゃあ、ここでちょっとだけ流すか」

 

兎がテーブルにスマホを置くと、曲が流れ始めた。

ボーカルは兎本人だ。

 

♪Darkness…

 

ダークネス?

いまダークネスっつった?

え、そういう感じ?

 

肩を震わせて笑いを堪える私を見て、兎は言った。

 

「あの、言っとくけど、俺この曲作った時は痩せてたから。あと、デブがいつも明るいところにいると思ったら大間違いだから。デブだって暗闇にいることもあるよ」

 

兎はおもしれーデブだった。

 

医者の二人はどんどんグラスを空けていき、聞いたことのないボトルワインを平然と頼んでいく。

 

ワインリストをちらりと見ると、目の前にあるボトルは一本1万5000円だった。

 

頼む。奢りであってくれ!!!

 

心の中で祈りつつ楽しく飲んでいたが、さらに酔いが回ってきた兎は、いよいよ自分の曲を流しながらエアDJを始め、「カラオケ行きたい」と言い始めた。

 

メガネ「海苔子さんは明日休み?カラオケ行ける?」

 

収拾のつかない兎と違い、後輩らしい気遣いを見せるメガネ。

 

私「休みですけど、終電までには帰りますね」

 

メガネ「あ、タクシー代とかも全部出すから大丈夫だよ」

 

ば、バブル…

 

そうして私たちはカラオケに移動し、店を出たのはAM1時だった。

 

メガネがタクシーを呼んでくれて、待つ間。

 

兎「今日、海苔子ちゃんと話して、こんな男同士みたいな会話できる女の子いるんだって初めて知って感動した。付き合えるなら付き合いたいけど、関係性が壊れるくらいならずっと後輩にしておきたい~」

 

おもしれーデブは、明日には全てを忘れているであろう呂律でそう言った。

 

私「さっきから適当に喋りすぎですよ」

 

メガネ「でも、本当に楽しかったので、また飲みましょう」

 

そしてメガネに現金2万円を渡された。

 

私「いや、さすがに悪いです」

 

メガネ「大丈夫。俺の年収2600万だから」

 

お、おぉぅ…

いや、そういうとこやで、お前。

 

と思いながらもありがたく受け取り、タクシーに乗り込み家に着くと、会計は6000円ほどだった。

 

私の中の悪魔「ラッキー!お釣りは貰っちゃえ!」

 

私の中の天使「ダメよ、今度会った時に返しなさい」

 

真面目な私は2人にお礼のLINEと、次回タクシー代のお釣りを返す旨をすぐに連絡した。

 

年末に1年を振り返り、あまりにも恋愛がうまくいかなかったことに絶望していた私だったが、一時的にでもチヤホヤされて、少しだけ自己肯定感を取り戻すことができた。

 

もし今後、もっと病んでしまう日がきたら、その時は患者として世話になろうと思っている。